職業というよりは、「労働」そのものの価値を論じている。
本書の第十章は、誰の為に不正を行うのか?というタイトルで「ミドリ十字の薬害エイズ事件」「三菱自動車の欠陥・リコール隠し事件」「雪印食品牛肉偽装事件」を取り上げている。
現代に生きる私達にとって、職業と倫理は相反するような感じさえしている。ビジネスとは、反社会的行為なのか?働くということは、法律を犯し、社会倫理を逸脱する行為なのか?
これは職業を有するものの深い悲しみであり、命題でもある。
著者は、この命題に対して、人類の歴史において「仕事」と「労働」を俯瞰し、今のように、反社会的行為を繰り返す労働者の職業観を解き明かしてゆく。
労働とは、時間または技能を貨幣と交換することを目的としていたのが、今や、仕事をすること自体が労働の目的と化しており、何のために働くのか見失われている。そのため不正を犯す人たちは、何か巨大なものに突き動かされているように感じている。
このような時代に、好きな時に好きな時間労働力を売って貨幣に替える者たちがいる。それがフリーターたちである。
「仕事」「労働」と倫理という命題についてじっくり考え直すには、大変参考になるし、社会で起きていることを読み解くにも役立つはずである。
大学のテキストに使用される本なので、小説みたいな読みやすさはないが、著者が、真摯に今の時代を憂いていることが感じられる真面目な本である。